Twitterの「縛りSSったー(http://shindanmaker.com/15896 )」で出てきたお題。

【「ビニール傘」「繋いだ手」「海岸」に関わる、「不得意ジャンル」のSSを
 5ツイート以内で書きなさい】

私の不得意ジャンルといえば・・・それは甘い話(致命的)
4月のニーナの日祭りに寄せて。ニーナ視点。全5ツイート(700文字弱)。

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雨に煙る冬の海岸はいつもよりもひどく寒々しい。
普段なら夕陽が美しく映える水平線も、今日は低く垂れ込めた雲が境目を曖昧にして、
どこまでも仄暗いその様はまるで先の見えない未来のように。
予報が外れ急に降り出した雨の下、並んで歩く二つのビニール傘は
近づきたくて、でもこれ以上近づけないもどかしい距離のまま。

残り時間を数えるのにもこの頃すっかり慣れていた。冷たい冬の雨が黙って
透明な傘の上を弾き流れ落ちる。
あとどれだけ、こうやって一緒に帰れんのかな。
この雲が晴れて、切れ目から春の気配が覗いた時別れは訪れて、そうしたら
二人を繋げてた絆も、重ねた時間もみんな雨と一緒に砂浜に染み込んで消えていくのかもしれない。
その前にせめて少しでも、これまで繋いだ手の温かさを覚えておきたくて、
沈黙を破り少し前を行く彼女を呼び止めた。

……けど、その手を握るための上手い口実も見つからないまま、押し黙るオレよりも先に、
振り返った彼女がオレの顔をまじまじと見てこちらに歩み寄る。
「ニーナ、ひどい顔してる」
「え!なにそれ急にヒッデェ! …アンタさぁ、今になってそれはねぇし……」
「違うよ。今、泣きそうな顔してる」
「………。 マジで? でもじゃあさアンタこそ、そんな顔しないでよ。
 ズリィって、どうしていいか分かんなくなるじゃん。今、そんな目されたら……」
言い終わらないうちに、ビニール傘がひとつふわりと宙を舞った。
さびしさを押し込めてきたのはオレだけじゃないんだって、
湿った砂浜に転がる傘に呟いて噛み締める。
傘を手放した目の前の彼女の温もりを手のひらだけじゃなく、今は全身で受け止めながら。







(2011.4.27)