・・・今度こそ、清く正しい黒攻めSニーナを書いてリベンジしたかったんです・・・

 *素敵すぎる攻めニーナの挿絵をあゆさんに描いて頂きましたよ!
  本当にありがとう!!


以下ご注意

☆R-15です。

☆黒攻めニーナ。ヘタレニーナはお留守です。

☆二次元のそのまた向こうの物語。どうしてこうなった、は心の中にそっとしまっておいて下さい。

ニーナはやはりヘタレでないと、という方はイメージ壊しちゃう可能性大ですので
どうぞお気をつけください。


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冷たい壁に押し当てられた彼女の肩が、少しずつ荒くなる呼吸とともに小さく上下するのを
静かに眺める。
扉を開けここに来るや否や、黙ったまま薄暗い壁にアンタを押し付けた。
上下階に続く非常階段の踊り場の角。

小さく切り取られた明かり取りの窓から、埃っぽい踊り場の隅っこに細く斜めに西日が射し込む。
壁を背にした逆光の中でも透き通るようなアンタの瞳が、普段よりもやけに
なまめかしい光を放つ。
薄い窓越しに遠くから小さく耳に届くグラウンドの誰かの声。
けど今ここにいるのは少なくとも、アンタとオレの二人だけ。

だから今日は、誰にも邪魔させない。もう、どこにも逃がさねえよ。


【POKER FACE】

絡まる視線が鎖のようにオレを捉え、判断力を失わせ、もう止めようとしても出来ないほど、
体の奥底で理性の仮面を剥ぎ取ったもう一人のオレが暴れ始める。
状況とか場所とかそんなのどうでもいい。今すぐここで、アンタの頭の中
オレのことでいっぱいにさせてやるから。
音もなく解かれた彼女の胸のリボンが足元に落ちた。

ツンと横を向き目を逸らしていても、本心は隠し切れずその頬も、首筋も
徐々に薄く色づいていく。 目を見開いて、首筋すれすれまで近付いて、
赤らむアンタの顔を顎の下からいたぶるような視線で眺める。
無理をして、気持ちを隠そうとしてる時の表情。その強がりが、かえってオレを本気にさせるのに。

「そんな顔してんのに、まだ平気なフリしてんの?

 へえ……じゃ、そのままどこまで冷静装えんのか見せてよ」

本心は押し隠して、まるで面白がるふうに。
まつげが落とす影に惹かれるように頬に顔を近づける。けど、まだ唇は触れないまま。
耳元で息を吐くように囁くと、
素直な反応を見せる彼女がその度に目を閉じて顔を背けようとする。

緩やかにそっと一枚ずつ、アンタの強がりで固めた心を剥いていく。
オレのこと夢中にさせてやるよ。もうこのまま堕ちてってもいい、アンタとなら。
顎の下に指を添えて、くいと顔をこちらに向かせた。

「……こっち見ろよ」

自分でも驚くくらい冷静に言い放った声にも、まだ意志の強い勝気な瞳で見つめ返してくる。
そうやって虚勢張った顔もかわいいぜ? けど、それでどこまで強がれんの?
そういう顔されるほどに、だんだんと崩れていく表情を見たくなる。

押し込めてた心が顔を覗かせた瞬間、ふっと笑みを消し、
目の前のその細い首筋を吸い寄せるように唇を落とす。
着崩れたブラウスから覗く白い鎖骨の方へ、丁寧に、でも貪るように強く吸い付き唇を沿わせると、耐え切れず、彼女の口から吐息とも喘ぎとも分からない声が漏れた。

「声出しちゃダーメ」

暴れる手首を制し、もう一度指を絡め直す。
壁に押し付けた彼女の手のひらがじわりと汗ばんでくる。

いちおう廊下に続く扉だけは閉まってるけど、がらんとした空間が上下階に繋がる非常階段。
声出せば丸聞こえだし、こんなとこ、いつ誰が来るかも分かんねぇし。
…けど、今はもう何も考えられない。何もかも忘れて今ここでアンタを溶かすまで。

首筋を撫でていた唇を離すと、壁に突いて閉じ込めていた右手で彼女の背中ごと強く抱き寄せ、一瞬驚いて目を大きく開けた彼女の今度は唇に自分の口を重ねた。
閉じた足の間に強引に膝を割り入れる。
逃げ出そうともがいても所詮敵わねぇよ?
抵抗する体を力で封じ、唇を割って舌を滑り込ませると、絡ませた指から
少しずつ力が抜けてゆく。

こうしてることがまるで夢のような気がする。
体から力が抜けるごとに、オレの方に引き寄せられひとつに重なっていく彼女。
口を塞いで封じていても、 その体の奥から放たれる声が、やがて零れる甘い吐息へと変わる。

もっと深く溺れるように、求めて、手に入れて、味わいたい。このまま−−

その時、突然背後にある扉が開く音がした。

「…………。 君たち、こんな時間にここで何をしている」

上の方から響く、よく聞き覚えのあるあの落ち着いた声。

「……あ、氷室先生ちょりーっす」

瞬時に、何事もなかったように平静を装い振り返ると笑顔で答える。そう、いつも通りの顔で。

「………足元にリボンが落ちている。何かあったのか?」
「い、いえさっき偶然外れて……何も、ないです」

おずおずと答える彼女の言葉を聞いても、何かを感じたように、
氷室先生はまるで刺すような視線でじっとオレたちを見つめる。
なにもかも全部見透かしてそうな、あの澄んだ冷静な目で。

しばらくの間、黙ってオレたちの顔を見比べた後−−小さな息を吐いた、ような気がした。

「………すぐに暗くなる。用事がないのなら早く帰りなさい」
「ハァイ」

素直に返事をして、階下に降りていく背中を見送る。
それを見ながら少し安堵の色を浮かべる彼女に、足元のリボンを拾って渡しつつ、
寄り添いながらもう一度、耳をかすめるようにそっと囁いた。

「でもまだアンタへの用事終わってねぇから。………今日はまだ、帰さねえよ?」










(2011.1.4)