前回書いた【In the dark】の終わり方があまりにも救いようがなかったため(´;ω;`)
ニーナを救うためだけに書いた続きの話。というか全く同じシーンの今度はバンビ視点です。
(In the darkの方から読んで頂いた方がいいと思います)


以下ご注意

☆必然的にR-18です。

☆高校を卒業し、オトナになったニーナとバンビです。

閲覧ご注意です。


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カーテンの隙間から差し込む青白い月光が、暗闇に横たわる自分の身体を
薄明かりで照らしだす。
耳の奥を支配する沈黙。はだけられたまま、恥ずかしさに顔が赤らむのを自分で感じる。
最後に身を覆い隠していた布が床に落ちる音だけが微かに聞こえた。
わたしを見下ろすその視線に耐え切れず、思わず固く目をつむる。


【水に浮かぶ花】

一見華奢に見えるほど細いのにその腕はたくましく、抗えない強い力でわたしを閉じ込める。
手首ごとシーツに押さえつけられ、何も纏わないままの肌を撫でるように指先が這わされていく。
普段は温かい彼の手が、今日だけはとても冷たく感じた。まるで氷でも触れているかのように。

見えない糸で両手両足を縛られているみたいに体が動けなくなる。
冷めた視線に晒されると、かえって身体の奥から理性を溶かすような熱さがせり上がる。
頬にかかる柔らかな茶色の前髪。高校の時からしている青いピアスが霞む視界の中で揺れた。

手首の内側から、ひじの裏を通り肩口をなぞって首筋へ。濡れた舌先がゆっくりと、
わたしの体の中心に向け這わされてゆく。
首からさらに下へ向かうほどに、だんだん息も荒くなる。ふくらみの先の一番敏感な箇所に舌が触れた時、思わず反応した体が小さく跳ねた。
最後の抵抗で閉じていた足も、いとも簡単に押し広げられ全てが露わにされる。
片手で手首を掴まれ、もう片方の手が探るようにその間へと伸びた。

「……っ!」

耐え切れずに声が漏れる。弄ぶような表情でずっとその反応を眺めていた彼はその瞬間、
本能のままの激しさをむき出しにした。
重ねた肌を擦り合わせるたびに、突き上げられるたびに、痛みと愉悦とが同時に襲う。
抱きしめられた腕の中で、現実と背徳心が揺さぶられる。
でも耳の奥に囁く彼の声に、息遣いに。
今はもう、どうなってもいいとさえ思えた。


どれほど貪るように求められても怖くはなかった。今日何十回と知れず肌に落とされた唇は
激しいようで、どれも慈しむような優しさがあった。
−−そしてその奥に隠された、心が凍てつくような悲しみも。

彼氏と上手くいってないって相談した時、そんなヤツもうやめてオレにしちゃえば?って、
半分冗談めかして言ったその時の、口調とは裏腹の真剣な目を今でも覚えてる。

オレのこと好きだって言ってみろよ? −−さっきそう言った時のあなたも、
あの時と同じ目をしてた。

どんなに冷たく切りつけるような言葉遣いをしても、力でわたしを押さえ付けていても、
その澄んだ青い瞳はどうしてそんなに悲しい色をしてるの?
まるではぐれた迷子みたいに、
今にも泣き出したいのを隠し必死でこらえている時の、強がる時の眼差し。
だからわたしはその目を見ていられなくなる。これ以上、
深い悲しみに包まれたその目に見つめられるのが辛くなる。

もう やめて………

吐息に混じってこぼれた声は、何に対してだったのだろう。

覆いかぶさったままわたしの上で小さく震えてる彼が、少し泣いてるようにも思えた。

わたしたちはどこに向かうんだろう。水の上に浮かび、波に流されるまま心許なく漂う花のように。
聞こえてくるのはどこまでも深い闇のさざめきと彼の息遣いだけ。
だけどこの先にほんの少しでも、共に分かち合える未来があるのなら。
そっと背中に腕を回し、汗ばんだ肌に唇を寄せて。わたしからあなたへ、
初めてのキスを落とした。








(2010.12.21)