ニーナ視点(ひとつだけバンビ視点)。

こちらも同じく、2010/11/19 秋のニーナ☆フェス用に書いたもの。

「に.い.な.じ.ゅ.ん.ぺ.い」 8文字であいうえお作文しました。
ひとつひとつはすごく短いです。

それぞれの親密度や力関係が文字によってちょっと違うので、
それぞれ8通りのニナバンだと思っていただければ。

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『に』

「虹?」
「そっ。今すぐ窓の外見てみて」
「ちょっと待って、窓開けるから…… あ、ホントだ!すごーい!!」

朝から降ってた雨も止んで、まぶしい青空の覗いた休日の昼下がり。
電話の向こうから弾んだ声が聞こえる。
木々を濡らす光る雫にも負けない、はしゃいだ笑顔が目に浮かぶ。

「今日のはちゃんと七色に分かれてるよな」
「うん!すごくキレイ。このためにわざわざ電話してくれたの?ありがとう」
「まあ、消えちゃう前にアンタに見せたかったし?」

……ホントは、虹でなくても何でもよかった。
アンタの声、聞けるんなら。

そうやってまたひとつ、電話かける口実が欲しかっただけ。

今オレたちは街のはじっことはじっこから、同じ虹を同時に見上げてる。
離れてても、まだ遠くても、
こうしてる間は繋がってられる気がした。

「なあ、もう少し、もうちょっとだけ、このまま−−」
「えっ?」
「……えっと、虹。−−消えなかったらいいのにな」


『い』

「いつもニーナって、すごく的確なこと言うよね」
「…お褒め頂きありがとうございます」
「どうしてそんなにわたしのこと分かってくれてるの?」
「そりゃ、いっつもアンタのことで頭がいっぱいだからでしょ。
 アンタのことだけ見てて、アンタのことばっか考えて、
 アンタのこと全部知ろうとして。…何もかも、全部オレだけのもんにしてぇから」
「えっ……」
「あ、顔真っ赤になった。アンタってすーぐそうやってほいほいダマされんのな」
「……! もうっ、ひどい!」

なーんてね。
ホントはそれ本気だって言ったら、今度はアンタ、どんな顔するんだろうな?


『な』

何気ない、いつもと同じ日曜日。
いつもと同じようにまた、部屋の中で一人、オレの葛藤が始まる。
アンタとの見えない駆け引きの時間。

かかってくるかも。電話。
それとも今日は、オレからかけてみる?
けどやっぱ、アンタから誘ってもらえんの、もうちょっとだけ待ってたい。
期待と不安の入り混じった気持ちで液晶を見つめてる。

………今日は遅くね?
もしかして今日、他のやつとの予定入ってるとか?

ちょっと自信なくしてベッドの上にケータイ放り投げたとたん、部屋に着メロが鳴り響く。

「もしもし?」
「よっす。…なんかさ、アンタからかかって来そうだなーって思ってたとこ。
 ……うん。あーヤバ、すっげ嬉しいんだけど。」

マジでかかってきた。ホッとする気持ちとドキドキする気持ちが今度は入り混じって。

今週も、アンタとの根比べには勝ったんだぜ。けどこうやって
月日を重ねるごとにどんどんアンタにハマってって。
駆け引きに負けてんのは結局、オレの方。


『じ』

じっと見つめ合ったあと、ニーナが目を逸らす時がすき。

わたしだけを見てもらいたくて、じーっと瞳を見つめて、息をするのも忘れて。でも
だんだん恥ずかしくなって、視線に耐えられなくなって。

そんな時いつも、わたしが目を逸らすほんのちょっと前に
たまんないって風に先に目を逸らす。
そんな時のほっぺたの色。

そんな頬を軽くつねって、いたずらっぽくちょっと笑って、
困った顔するあなたをぎゅって抱きしめたくなるの。


『ゆ』

「ゆびきり。」
「え?」
「また次も、二人で一緒にどっか行こうぜ? その約束」
「いいよ。……ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます!指きった!」

できるだけ遠回りして、日もすっかり暮れた頃、ようやく送り届けた家の前で。
繋いだ小指が離れると、大きく手を振って、家の中に消えていく彼女を見送る。

微かに触れ合うだけでこんなにも胸がドキドキして
彼女が傍にいるだけでこんなにも心が温かくなるって気付いたの、いつ頃だったんだろ。

願いを込めて結んだ小指が冷たくなっていく。
次の約束はいつ?
今別れたばっかなのに、もうアンタに会いたい。


『ん』

「ん?どしたの急にそんな背伸びして?」
「大事な話」
「何?」
「耳貸して?大きな声だと恥ずかしいから」
「こう?」
ふわり。せいいっぱいつま先立ちした彼女の、耳に触れる優しい吐息。
「……あのね、わたし、ニーナのことが……」
「………………。」
「……やっぱり内緒!」
「何だよそれ!そんな寸止めズリィしー!」
「−−−何て言うと思った?」
「それは………。」
「あっ、ほっぺ赤くなった。ニーナってカワイイ☆」
もう、この人のこーゆーとこヤダ。オレいじられてばっか。
クスッと小悪魔みたいな笑みを残して駆けていく後ろ姿に向かって、
聞こえないように小さく毒づく。

カワイイのはアンタの方!


『ぺ』

「ぺーちゃん!」
「ちょっ、突然何その呼び方!」
「だってカワイイかなと思って」
「カワイイってかさ……そんな呼ばれ方今までされたことねぇんだけど」
「じゃ、わたしが1番最初だね!」
「……まあアンタにしか、そんなふうに呼ばせねぇけど」
「何か言ったぺーちゃん?」
「なーんでも!一緒に帰ろうぜ、送ってくから」

アンタに会いたくて、校門で待ってたことなんて気付きもしないで。
この人はいつも通り屈託なく、無邪気な花のように笑う。


『い』

「息止めて?」

器用だとか、要領いいとか、口が上手いとか。
そんなふうによく言われっけど。

実際肝心な時にはそうでもないって思う。
−−例えば今。結局本当に伝えたい相手には、自分の気持ち半分も伝わんない。
だから、言葉じゃなくて。

「…目、閉じてよ」

素直に閉じる彼女の少しずつ染まる頬。
キュッと緊張気味に結んだ口。
握り締めた手。
近付いて……そのかすかに赤いほっぺたにそっと唇を落とす。

ゆっくり開かれる瞳。目が合うと、やっぱ照れくさくて笑い合う。
気持ち伝えんのってやっぱ難しい。けど
たとえ要領悪くてもオレたちは、こんなふうでもいいかもしんない。








(2010.11.21)