玉緒先輩SS。変則三角形・ニーナvs玉緒 その1。

物書き仲間さんたちとの企画ものとして。

公式の組み合わせじゃなく、
違う組み合わせで三角関係になるとどうなるか・・・ということで、
私がニーナVS玉緒先輩担当で、とりあえず序盤考えてみました。
全妄想なのでネタバレはないです。


以下ご注意

☆R-13〜15くらいかもしれない。

☆でも15にしてはゆるいです 。

☆多少展開おかしいです。アナタの玉緒があらぶってます。

☆デフォルトで大変に黒いです。

☆でも本当は私、優しい玉緒先輩が大好きです。


----------------------------------------------


僕は一体、君にとって何なのか。


クリスマスが近付き、お馴染みの定番ソングと共に街も
緑と赤のイルミネーションで華やかなムードに彩られた冬の季節。
だが僕にとってそれは同時に、同じ高校生として君といられる時間が
もう残り僅かだという現実を突き付けられる、ということでもある。

正直僕は焦っていた。
このままでは何の進展も無いまま卒業の日を迎えてしまう。
僕がいなくなった後の、あの二人の関係なんか想像したくない。

僕の目の届かない所で彼女をどうするつもりだ?

一年先に卒業しなくてはならない自分の立場をこれほどまで歯がゆく思ったことはなかった。


以前、はば学柔道部の公式練習試合を生徒会代表として一応視察に行った時
−−もちろん僕の目的はそれだけではなかったけれども、
その時マネージャーと部員という立場を超えて
君とずいぶん馴れ馴れしく接している後輩が居る事を知った。

正確に言えば、前々から存在と名前は知っていたけれど。
今年の入学式に、新入生代表で挨拶した彼。
成績も常にトップクラスでスポーツも出来ると聞いている。
何よりも彼女と同じ柔道部に所属して、
僕よりも、普段ずっと長い時間を共にしている・・彼女とかなり近い存在だということを。


生徒会長をやっていれば、それなりに僕の耳には校内のいろんな噂が入ってくる。
君たち二人が一緒にいるところを町で見かけたとか、
かなり仲がいいらしいという話を耳にするたびに
表面上はなんとか涼しい顔を保ってきたけれど、
先日彼らがもう付き合っているという噂を聞いた時の僕は、
さすがに動揺を隠し切れていなかっただろう。


言われてみれば最近の君は様子がおかしい。
なんとなく二人で会う事を避けられているような気もする。
先週の日曜誘った時に断られたのは、もしかして彼との約束があったからなのか?

雰囲気や話し方にしたってそうだ。
ファッションのことには疎いけれど、最近の君は今までのような清楚で可愛らしい服装じゃなく
妙に大人びたセクシーな感じを好むようになってきたのも、
全部、彼の影響だったというんだろうか。

考えれば考えるほど疑心暗鬼になり、何かもが疑わしく思えてくる。
これまでの君の態度だって、全部裏があったのではないかとさえ。

一方でそんな風に考えてしまう自分がひどく後ろめたい。
でもそれ以上に心を支配する、湧き上がるような独占欲を自分でも持て余し、戸惑っていた。
ただ君のせいで感じる、胸をぐちゃぐちゃに掻き乱されるようなこの気持ちを
もう一人ではどうすることもできないということだけは、自分でもよく分かる。

僕にはもう時間が無いんだ。

今すぐ君に聞きたい。
彼との関係について。そして僕の存在について。
今すぐ学校中を探してでも君を見つけ出し、問い詰めたいという衝動に駆られつつも
突然そんなことだけを聞きに行けるはずもなく、
渦巻いた気持ちを抱えたまま、無理矢理自分を落ち着かせようと、
たいした用事もないのにひとり放課後の生徒会室で何度も見たはずの資料をまとめていた。


突然。
扉をノックする音。そしてずっと欲していたあの声−−

「失礼します」

心に思い描いていた通りに、彼女が部屋に入って来る。
今日だけは神様に感謝しなくちゃ、とそっと心で呟いた。
でも表面上だけは努めて冷静を装い、笑顔で出迎える。

「どうしたの? 何か生徒会に用事なら僕の方で聞くよ?」
「あの、次の柔道部の公式練習試合申請に必要な書類を提出しに−−」
「ああ、あれね。分かった僕の方で責任持って預かるよ」

「・・こんな時間まで一人でお仕事ですか? 大変なんですね」
「仕事ってほどじゃないんだ、手持ち無沙汰だったから」

自分がさっきまでここで考えていたことを知られたらと思うと、自然と体が熱くなってくる。
・・・でもその動揺はみじんも、顔には出さなかった。

書類を預かれば彼女の用事は終わってしまう。だけどここにもっと居て欲しい。
違う。僕の話が終わるまでは絶対に帰さない。

「そうだ、もし時間があるなら、ちょっとだけ作業を手伝ってもらえるかな」
「はい、大丈夫ですよ。何をしたらいいですか?」
「そこの棚の中にある青いファイルを取って来て欲しいんだ」

言われるまま素直に僕が指し示した戸棚の方へと向かい、
背中を向けた彼女に静かに背後から近付いた。
右腕を伸ばし、背伸びするように高い位置にあるファイルを取ろうとしてる
彼女の手首を左手で何も言わず後ろから掴む。

彼女が驚いてこちらを振り向き、拍子に取り出しかけたファイルを落とした。
挟まっていた書類が虚しく宙を舞い床に散らばるのに構わず、
高い位置で手首を掴んだまま、後ろの戸棚に彼女を押し付けた。

何か言おうとする彼女の前に口を開く。

「聞かせて。君と新名くんとはどういう関係?」

予想もしてなかったであろう質問に、言いかけた言葉を引っ込めるのが分かる。
でもこっちもそれを聞くまで許すつもりはない。手首に絡めた指に力を込める。

「・・・正直に言って。付き合ってるんなら。」
「そんな、付き合ってなんて・・・」
「・・じゃあ、僕のことはどう思ってる? どうして二人きりで会ったりする?」

何も答えない。黙ってこっちを見つめたままの瞳がじんわり涙で潤んでいる。
こうなった以上引き返すわけにはいかない。もう何も無かったことにはできない。
僅かに残る理性も、自分が築いてきた立場も、誰かに見られるかもという恐怖も、
今の心を埋め尽くし溢れ返るように激しく渦巻く感情には勝てなかった。
言葉で返事をもらえないなら態度で聞き取るまで、だ。
手遅れになって彼に奪われる前に。

迷いもなく、花の蕾のように可憐な唇に自分の口を重ねた。
思わず身をよじって逃げ出そうとする彼女を封じ込めるようにますます握る手に力を込め、
求めるままに柔らかな感触をむさぼる。

最初は暴れていた手首からだんだんと力が抜けていくのが分かる。
心のどこかで疼く罪悪感も、ようやく彼女を奪ったという充足感に覆い尽くされ今は何も考えられない。

吸い付くようにその感触を確かめ、味わうように舌先を滑り込ませる。
何かを訴えようとする彼女から力を奪い、息も忘れるほど自分の唇で口を塞ぎ続けた。

弄ぶようにしばらく唇の温もりを楽しむと、今度は赴くままに少しずつ
口先を首元に向けて這わせていく。
君が小さく声を上げ何か言った気がした。

その時、
部屋の入り口で何かが落ちる音が聞こえた。


「なにやってんの、アンタ・・・・」

その声だけで分かる。確認する間でもない。
だけど不思議と彼に見られたことに動揺はなかった。
ゆっくりと彼女から顔を離し、入り口の方を振り返る。

怒りとも驚きとも悲しみとも取れない感情をたたえて
刺すような視線でこちらを見つめる新名がそこに立っていた。


To be continued...








(2010.10.15)